Siggraph Asia 2009 「レンダリング用・ゲーム用キャラクターの同時制作ワークフロー 」

そういえば、先日のSiggraph Asia 2009のセミナーの記事を書いたまま、公開ボタンを押すのを忘れていました…。
旬は過ぎてしまいましたが、ボタン押します。ポチっ!

概要

レンダリング用・ゲーム用キャラクターの同時制作ワークフロー
  • Producing Pre-Render/In-Game Shared Character Assets
  • Thursday, 17 December | 9:00 AM - 10:45 AM | Room 502
  • 日本語のみで講演 / Presented in Japanese

このセッションの講師は以前紹介した、フェイシャルのDVDで講演しているid Software (元・Electronic Arts)の原慎一郎さんです。

セッション内容についてはタイトルから想像するものとは違い、「レンダリング用・ゲーム用キャラクモデリングの並行しての作業の紹介」というよりも、「キャラクターモデリング全般に対するTipsの紹介」をメインにされていたように思います。

また、セッションでは原氏のHPにアップされている、鎧を着ているキャラを題材に、説明が進められました。

開発体制

制作期間
  • ハイポリ・ローポリあわせて、1人で作業を行う
  • 1体制作するのに、約1ヶ月
開発ツール
使用箇所 ソフト 補足
テクスチャ作成 Photoshop (ver.7.0) 使い易いので、7.0からアップグレードしていない
基本的なモデリング Maya (ver.2009) 3Dモデリングの要、一般的な使い方
高解像度モデル作成 Zbrush (ver.3シリーズ)
テッセレーション Zbrush (ver.2シリーズ) テッセレーションマスターが使い易いので、
3Dビューワー manmaset 素早くリアルタイムビューで確認したい時に使用

FPSモデリングについて

主人公 14000ポリゴン程度
ザコ 8000ポリゴン程度

→ポリゴンの使い方は、画面の30%程度を占める、「手」と「武器(銃・ナイフなど)」に注力。画面全体がクオリティアップした印象になる。

モデリングの基本

「三角ポリゴンは使うな!」は時と場合による
  • Zbrushに持っていった時にピンチする(尖がる)ので、DCCツール上でできるだけ三角ポリゴンを使わない方が良いというが、使い方に気をつければ問題ない
  • Mayaのスムースをかければ、三角ポリゴンも四角ポリゴンになるので、気にしなくても良い
  • 顔のシワの収束点としては、効果的に使える
  • 人間の表面は、綺麗にラウンド(丸まって)出来ていいるわけではないので、尖っているところの表現にも利用できる

→要は使いよう。使う場所を認識していれば問題ない。

高解像度モデルはあまり作りこみすぎない
  • 凹凸情報を作りこみすぎても、結局はノーマルマップに乗らない
    • 反映されないものを作っても意味がない
  • その分、カラーテクスチャに凝った方が、よっぽどクオリティが上がる。
衣服のモデリングでの手の抜き方
  • アーティストは、Zbrushで凹凸情報を作りこみたがるが、あまり意味がない。
    • 低解像度モデルを、サブディビジョンして、クロスシミュレーションすれば、瞬時にベースが出来上がる
  • どこを間引いて、どこに時間を割くかが肝心
    • 人間が見て関心がいかないところは徹底的に省略する

→アーティストの作りたい所が、クオリティが上がる場所ではない

まぶたのテクスチャ
  • まぶたのUVは、伸縮が激しいので、瞬きした時に伸びやすい
    • 伸びが見えると、クオリティの低下に繋がりやすい
  • 半分目を閉じた状態で、UVの展開テクスチャの貼付けを行う事で解消
    • 簡単なことなので、やった方が良い。
デフォルトポーズを、Tポーズや、Aポーズにしない
  • 関節が伸びた状態でテクスチャを貼ると、必ず関節のどちらかに伸びが発生してしまう
  • 腕・足関節は、ある程度曲げた状態を「デフォルトポーズ」とする。
  • 肩も若干落とした状態を「デフォルトポーズ」とする
    • ただ、上記のポーズのままモデリングすると、編集が複雑になるので「デフォルトポーズ」とTポーズでキーを打って、モデリングする時はTポーズ、UV・テクスチャ編集、エクスポートの時は「デフォルトポーズ」を基本とする。

→テクスチャが伸びると、確実にクオリティが下がったように見えるので、箇所によってUV展開を調整する

UV展開
  • 歪んだ状態を修正するために、RelaxとUnfoldを使用して、UVを伸ばしていく
  • 一括でUnfoldするのではなく、プロジェクションで貼った時に伸びていないなと思った部分を、Pinで留めてUnfoldをかけると、そこを残したまま、延ばすことができる
  • Unfoldの連続、歪みの無いところを固定してUnfold
テクスチャを各時は、レンダリングした情報を徹底的に利用する
DCCツールと、スカルプトツールツールの併用
  • 低解像度のベースモデル部分や、顔(低解像度・高解像度)などはDCCツールで制作
    • 顔は、ポリゴンの割り、UVの展開などが非常に重要になるのでDCCツールで詰めていく
  • 高解像度モデルには、スカルプトツール
    • あまり、割りを気にしなくて良い部分や、有機的なモデルは、スカルプトツールが効率的

まとめ

海外の開発現場の方の話を直接聞く機会が無いので、貴重な機会でした。

とにかく原氏が説明される言葉の端々に、「効率化せよ」「自動化せよ」という内容が含まれていたのが印象的でした。プレイヤーが見て、クオリティが高いと感じる部分は作り込み。あまり気にしない所は、自動化する。それを徹底している開発体制を重視しているようでした。

ただ、やはりこの作り方は、フォトリアルな表現や、大量のアセット制作に向く手法のような感じもするので、それに向いているプロジェクトでは、活用出来る手法ではないかと思います。

参考資料・関連リンク