昨日(12月23日)、新清士さんがTwitterで実況中継されていた講演が非常に興味深い内容でした。
講演はIGDA日本が開催した、グローカリゼーション部会の特別編で、ナウプロダクションさんが実践されている海外戦略についてものです。
今までゲーム系のセミナーに何度か参加していますが、それらとは一味違った切り口で、非常に納得度が高く、しかも実践的なモノだったように思います。(今すぐ自分が使えるかは置いておいてです、はい…。)
また、Inside-Gamesに以前CEDEC2008で講演された時のニュース記事が上がっていました。こちらは、ちょうどリーマンショック以前(2008年9月)の記事となり、今回行われたものとはデータの予測などが違っていますが、根幹にある内容については変わっていないと思いますので、併せて御覧いただくと面白いかもしれません。
では、下記に新さんがつぶやいた内容をまとめてみました。大阪にいながら、東京の講演内容が中継で見れるってのは良いですね。新さんありがとうございます!
追記 1:(09/12/25 13:00)
先程inside-gamesに記事が上がったようです。こちらの方が内容が詳細ですので、併せて御覧下さい。
- 海外パブリッシャー向けの営業とは・・・IGDA日本グローカリゼーション部会 特別セミナー
追記 2:(10/01/07 22:10)
コチラにプレゼン資料がアップされましたので、追記しておきます。
- 欧米パブリッシャーとのビジネス(Slide Share)
大信さんの略歴
まずはじめに、現状の動き
大信さんのデータ分析
- やはり日本市場が厳しい
- 北米はパッケージ10%ダウンだが、ダウンロードを含めると10%程度伸びているのではと海外パブリッシャーは考えている
- リーマンショック以後、タイトルの査定が厳しくなっている
- 企業も見られるし
- 新規Ipは認めない流れ
- Wiiの今後の予測
- 大信さんの予測する今後の市場
- 中国市場が予想以上に急成長しており
- 一方で日本だけが縮小
- 今後は日本市場にローカライズされないタイトルが増加する可能性
-
- 今回使われた市場規模の図がコチラ。以前のものと比べると、中国市場の成長予想が変わっている
海外企業との交渉について
- 海外企業との交渉は直接会うのが良い
- 大使館ツアーは投資を促すものが多く、パブリッシャーがこない
- エージェントを使うのは一次情報が入らない
商談場所としてのイベントの利用
- ナウプロとしては、3月のgdcと9月のtgsを中心に新規提案を用意
- 他のコンベンションを補足する形で利用するのがよい
- Gamesconは8月のものがよかった
- 先週のリヨンのゲームコネクションも220社以上の参加があり商談場所としてよかった
- 東京ゲームショウも実はいい商談場所
- あまりよく知られておらず、また運営方法も世界的に見て遅れている
- 商談に入るまでに必ずNDAを結ぶ
- 結びたくない雰囲気があるがそこで手間をかけておく事が重要
- そこで本当に関心をもっているのかにふるいをかけられる
今年のgdcのケース
- 3日間で最大45社にあえる計算
- フルに毎年びっちりとスケジュールを入れる
- 大手パブリッシャーは前半2日にしかいない事が多いため
- 彼等の優先順位に入れてもらえるかどうかが勝負になる
- デベロッパーにもあう
- ペルーの企業などとあう
- それはローカルな情報を得るため
- 単にコラボの可能性を探るため
- 欧米パブリッシャーは実際には極めて保守的であり、フルデベロップメントの経験のない企業はそれだけで対象にならないことも多い
- 交渉に出てくる人達は、プロデューサーではなくビジネスデベロップメントの人たちが多い
- 彼等はその企業が取引に値するかどうかの判断をする
- そのあと話が進むとそういう人たちが出てくる
欧米から見た、日本の開発者
- 日本の開発者はいまだに評価が高いが「納期を守らない」と必ず指摘される
- それらのものが蓄積されビジネスデベロップパートナーとしての信頼が極めて低いのが定着している
- 日本企業の苦戦は続編ばかり作ってリソースをそこに最適化したために、欧米圏で起きた新しい開拓をする努力が不足している面があるからではないか
- 企画書はゲームメカニクスを問われる
- 50万本がまず前提でそこまで売れるもので即訴求するものを見せないといけない
- 何がいいのかはわかりにくいけど、これがダメというのはすぐわかる
- 社内でも10のうち7は落とす
- 簡単なプロトタイプを開発してそれがよければ、プロトタイプ契約に進む
- この予算は15-20万ドル程度で3ヶ月以内
→それより時間がかかると相手にされない
- ゲームも販売やマーケティング方法も含めて提案が求められる
- ディベロッパーであっても、パブリッシャー的な機能が求められる
- そのため開発者は他者の動向やゲームの動きを精通することが当然になってきている
- 日本の開発会社が弱い点の一つで社内でも強制的に他者のゲームを多数プランナーに遊ばせている
- 社内の規格提案はパワポはいらないので、2〜3枚でかまわない
- それを選んでブラッシュアップ
- キービジュアルは重要
- 提案書はスライド7枚ぐらい
→商談の時間は事実上5分ぐらいになるので、それで伝わる必要、次の段階でプロト
海外で必要とされる企画内容
- 企画内容として海外市場向けの企画は日本向けの企画ではまず通用しない
- 日本のゲームは海外では売れないと思うべき
- 日本人の開発者はともかくストーリーにこだわる傾向がある
- ストーリーがないと作れないとの思い込みがある
- ところが海外企業はそれはいらない
- ゲームメカニクス重視
- 実際、海外のユーザー調査を行うとその結果が裏付けられている
- 商談時には決して商談相手はネガティブなことを言わない
- そのために勘違いすることがある
- 興味があれば即連絡してくる
- 開発チームには1名しか英語が出来る人がいない
- いなくても英語向けの開発ができる
- ただし、英語のできるアカウントマネージャーは7名おいている
- 大信さんが契約後の出金フロー等も全て見ている
- そうしないとすぐに無駄なフローを増やしてしまう傾向がある
- 特にマルチではすぐに無駄な工程を増やそうとしてしまう
→制限の中でいいものにする努力がいる
海外のパブリッシャーが重視する評価基準
- 欧米パブリッシャーはメタクリティックの70点を一つの指標としており
- そのスコアを取れなおいと次の発注が来ない
- 契約にメタクリティック何点でボーナスという内容を入れるぐらい重視している
→見た方がいいところのスコアとしてはIGNをあげてくるとか
- 作る段階でも、極めて厳密にアルファ設定をする
- クオリティベンチマークが厳しくそれが合意しないと次の開発ステップに進まない
- 日本のように作って行く最中に段々と面白くなるという作り方は認めない
- アルファとベータの間でクオリティベンチマークが実施される
- そこで開発が中止になることも少なくない
- 今や日本のゲームビジネスのほうが特殊になってきた
- クオリティ1番、予算2番、納期3番では対応不可能
→納期予算を守ることがビジネスの基本
- 例えば某大手では5つプロトタイプの開発に進んでも
- 3つは正式開発に進まない
- 海外出張が140日に達していても実感としては、90%以上を社内調整に費やしている
- 最大の障害が社内の意識改革
- 既存の市場に慣れすぎているために意識が低い
- 世界中に様々なベストプラクティスが存在している
- 台湾や中国など、ゲームの質は劣っているがビジネス面では日本のほうがはるかに遅れている
- ただ十分に海外に出て戦える機会はあり
- さまざまな企業とのパートナーシップを探している
→この後、質疑応答・ディスカッションがあったようです
まとめ
今後の市場規模を考えると、日本国内だけを市場にするのは困難なのは言うまでもなく、将来的にも縮小傾向にあり、すでに国内の開発会社は仕事がなくなってきている。
ただ、いきなり、国内の開発会社が、海外でゲームを販売するのは敷居が高いように感じるが、海外パブリッシャーは、日本の開発会社と仕事をしたがっているのでチャンスはありそう。
付き合い方として、向こうはビジネスパートナーとしての関係を気付きたいと思っているので、日本と海外のしきたりの違いを知って、そこを押さえる事で、お互い良い関係を築ければ、可能性はある。