God of War 3のメイキング映像

God of War 3(以下Gow3)のゲームディスクに特典として入っているメイキング映像(+ α)が、Youtubeに上がっていました。

主にビジュアル部分についての映像なのですが、英語音声のみ(特典映像のやつは、日本語字幕切り替えが出来る)だったのと、内容が面白かったテクニカルアートの項目がなかったので、補足を入れつつ感想を書いてみました。

あと、メイキング映像ってことで、思いっきりネタバレすると思いますので、まだ未プレイの方は御覧になるのを避けてもらった方が良いかもしれません。

メイキング:God Of War 3全体

GoW2が終わって3が始まるまでの時期や、ディレクター交代劇、アルファ版・ベータ版・マスターアップ直前までを追った映像です。40分近くありますが、これからのメイキング映像を見る前に見ておくと、スタジオ全体の雰囲気がわかって良いかもしれません。

キャラクターアート


ヘラクレス・ヘルメス・ケンタウロス・タイタン族・クレイトスのモデリング過程が垣間見れます。

この映像で製作者が語っていた「リアリズムの追求はあるレベルまでは楽しい。ただ、非現実なものをリアルに見せるのはもっと楽しい。」という言葉通り、骨格や筋肉の隆起などは大きくデフォルメして表現されていたり、ケンタウルスなどの架空の生物に対しても「上半身の人間部分の腹筋・腹斜筋が合流して馬の部分につながる。ちょうど人間でいう腰の部分が馬の肩甲骨になるんだ」と、現実には存在しないモノを説得力を持って見せるために、かなりの資料を用意して練り上げられているようです。

コンバットデザイン

コンバットデザイナーの方々が、GoWのこだわりについて、お話しています。

この方達は戦闘に関係する全ての調整を管理していて「GoW3では、今までメモリとモーションの制御の関係で上手くいかなかったつかみ攻撃を実装したよ」とか、「ヘリオスの頭で暗闇を照らしながら戦うんだけど、今まではダイナミックなライティングが実装されてなかったので、今回が初めてだよ」と言っています。

この映像の中で個人的に面白かったのが、クレイトスがサイクロップスに乗って敵を蹴散らすシステムの解説で「クレイトスは決して、サイクロップスを手懐けて命令しているのではなく、最終的にはこの怪物を殺そうと思っていて、肩口に武器を突き立てる事によって、サイクロップスを痛みによって反応させている」というくだりがあり、今年のGDCの講演であった、クレイトスルールがリアルに根付いてるんだなと、感動しました。こういう一貫した要素の積み重ねが、キャラクターを個性づける要因になるんですね。なるほどぉ。

GDC 2010]クレイトスルールってなんだ? 「ゴッド・オブ・ウォーIII」の戦闘シーンはこうして作られた
http://www.4gamer.net/games/093/G009304/20100313015/

 面白いのが,ここまでに紹介した内容はすべて,絶対に外せないルールのもとに決められているということ。それは通称「クレイトスルール」と呼ばれており,以下の四つが定められている。

  • クレイトスは絶対に笑わない
  • たとえ相手が巨大でもセンターポジションは譲らない。なぜならクレイトスは恐怖を感じないから
  • クレイトスは絶対に背中を地ベタにつけない。つけるときは死んだとき
  • クレイトスはつねに前へと進む。逃げるような動きは決して用意されない

アニメーション

この映像の中でもアニメーターの方が、語っていたのはクレイトスルールに基づいた動きをどう再現するかと言うことです。

重要なのはクレイトスらしさを表現することで、その動きが何を表すかのか、彼は単刀直入なので、怒ってる時は見ただけで荒々しい、誰かと会話している時は、何か言う必要が無い限り、彼は黙って立っている。など、今までのシリーズで築かれたイメージを土台に、新しい表現を追加していったようである。

特殊効果

特殊効果と書かれていますが、血しぶきの作り方のみを説明しています。

今回は、エフェクトのテクスチャー素材として、ネットでありとあらゆる映画の特殊効果について勉強しそれらを再現したようです。スタジオの庭で、実際の血流の映像を収録し、実際にゲーム中で使っている流れを紹介していますが、これだけ自由なスタジオの雰囲気は羨ましいですね…。

テクニカルアート

これはYoutubeに上がっていなかったのですが、ゲームディスクにはテクニカルアートと題した映像も入っていましたので、簡単に要約してみます。

まず、映像の冒頭にテクニカルアーティストの方が「ツールを作る側と使う側、両方をサポートする役目」「コードを書く人間と、アーティストの間には深い溝がある。その橋渡しが自分の役割」と語っており、スタジオでのテクニカルアーティストのスタンスが垣間見えました。

また、この映像ではいくつかの便利機能を紹介しています。

ポセイドンの水表現

ポセイドンの体の表面には水が流れているようなシェーダーが施されていますが、この表現には、水のうねりを表現したパララックスマップをUVスクロールする事で表現しているようです。(これはもっと具体的な事を知りたいなぁ)さらに水の飛沫や、動いた時の軌跡などはパーティクルを付加することで、より水っぽくみせているようです。

ジッパーテック

これはクリーチャーの体を切り裂く時に、その傷口の広がる過程をアニメーションしやすくするためのRig構造です。”ジッパー”というのは、まんまその通りの意味で、アニメーターの思い通りに傷口の開閉を制御できるように組まれたRigを制作したようです。

例として、ケンタウルスのお腹を割く所が挙げられていましたが、良い感じで切り裂かれていました…。

ダイナミックシミュレーション

今までのシリーズでは、布や髪の毛の表現が固まっていましたが、今回はリアルタイムでシミュレーションさせる技術を、プログラマと協力して実現させたようです。映像では説明がなかったのですが、実機上でのシミュレーションだと思います。

ノーマルマップのブレンド

ここではクレイトスの表情を例にして、通常状態のノーマルマップと、力が入った時のノーマルマップを、ボーンの状態をみてブレンドするテクニックを紹介していました。手法としては、以前紹介したフェイシャルリグのものと同じだと思います。

背景のパーツごとにエクスポートする機能

これは、プロジェクトに特化した機能です。DCCツール上で、ステージの形状をちょっとだけ変更しただけなのに、ステージ全てをエクスポートするのは非効率って事で生まれたもので、指定した一部分だけをエクスポート出来るようにした便利機能のようです。

ポセイドンデモ製作


途中で出てくるリードテクニカルアーティストの方が「最初にコンセプトを見た時”お前ら何を考えてるんだ?”と思った」と語っているように、今までのシリーズで使われたアイデア・演出を越えるものを作るというコンセプトを元にブレストを行い、そのアイデアを各部署で作り上げていくという流れを取っているようです。

この映像では、そのアイデアを元にした、プログラム・レベルデザイン・テクニカルアートと各パートの作業の様子を見ることが出来ます。タイタン族に設定されたコリジョンとか、その上で走り出すクレイトスとか、当初はかなり無謀な挑戦だと各パートで思っていたようですが、最終的にその無茶なアイデアが実現されたというのは、見ていて驚きがあります。初期のプロトタイプの映像をみているだけだと、到底実現出来るとは思えない感じで…。

キメラの制作

この映像は特典に入っていないものなので、どこかのタイミングで公開されたものでしょうか?ゲーム中に出てくる、キメラのメイキングが紹介されています。コンセプトアートから、モデリング、コンバットデザインまで、一通りの流れを見ることが出来ます。

まとめ

海外のメイキングは、プロジェクト初期から追ったモノが多いですね。現場としてはたまったもんじゃないかもしれませんが、見ている方としてはプロジェクトの経過がわかってありがたいです。あと今回メイキング映像を観ていて思ったのが、このチームには、今まで想像もしていなかったアイデアや仕様が来る事に慣れているメンバーが多くて、「また来たか。じゃぁ今回はどんな手法使おうか」と前向きに考えている場面が多かったのが、とても羨ましいなぁと思いました。優遇されていたり、ユーザーからの期待が大きいチームだからというのもありますが、こういう姿勢は見習いたいですね。

アンチャーテッド2に続き、GoW3のメイキングも堪能できました。

追記(3月31日 12:45)

GAME WATCHGod of War 3開発者のインタビュー記事がアップされたようです。上記メイキングと併せてご覧いただくと、より深い内容に触れる事ができると思います。

SCEA、「GOD OF WAR III」開発者インタビュー あの500メートルの巨人や怒りの表情はこうして作られた!