サイバーコネクトツーさん独自の体制と、その核となる文化 (後半)

では前回に引き続き、サイバーコネクトツーさんの体制を見ていきたいと思います。

積極的な情報の発信

”情報はアウトプットする者の元に集まる”という信念の元、積極的な情報発信を心がけているようです。理由としては自分たちが情報を公開する事で、他社さんがそれをアレンジする、それをまた自分たちで吸収するスパイラルを作るのが目的のようです。

この辺りは最近開始された活動も多いため、ご存知の方も多いと思いますが、面白い動きをピックアップしていきます。

CC2 LIVE

最近の動きの中では、印象に残る活動ではないでしょうか。

サイバーさんの社内で行われた講演を、Ustreamで配信してしまおうという動きです。現在は、もじぴったんなどに携わられたプロデューサー、中村さんの講演が、2回(+ 1)配信されており、上記サイトの履歴からも確認する事が出来ます。

実はうちの開発でもみんなで見てたのですが、社内のトラフィックが急上昇して、映像が受信できなくなったのは良い思い出で…。

これからも続けていってもらいたい活動の一つです。

CC2 Tweet

ゲーム開発会社の中では、早い段階から実名公開に踏み切って、つぶやきを開始しています。

気持ちとしてはユーザーさんとの距離を縮め、身近に感じて欲しいと言う思いからされているようです。たまに掲載される写真から開発機材をチェックしたり、本棚の画像からはマネージメントの本のタイトルを盗みみたりと情報収集をさせてもらっています(苦笑)

CEDECへの参加

今回のCEDECではサイバーさんの開発者が関係するセッション数が過去最大になるようで、発表されていないものも含めると大手の会社とも肩を並べるほどの数になるそうです。キチンと数えたわけではありませんが、デベロッパーの発表としては過去最大になるのではないでしょうか。

他社の開発者から聞く事もありますが、CEDECGDCで講演すると、同じ方向に興味を持つ開発者さんが声をかけてくれ、交流が一気に広がり、そこからお付き合いが始まって技術の交流が活発になる事もあるようです。次に紹介する会社同士の技術交流会もその一部だと思われます。

ちなみに下記は、現在までにサイバーさんが、CEDECGDCで行った講演のリストです。自分もCEDECのものはいくつか観ていますが、説明が分かりやすくて、帰ってからの作業にも反映させやすい内容ばかりで、重宝しています。今年は、FXアーティストラウンドテ−ブルあたりに顔を出したいですね。

※今年のやつは、まだ全て公開されていないようです。

会社間での開発者同士の交流会

交流会の時に聞いた話ですが、他社さんに開発者を送りこんで、積極的に技術の交流を進めているようです。

とある会社さんの場合は、サイバーさんから10名程度のメンバーを送り込み、自社の開発体制をプレゼンした後、逆に訪問した会社さんの開発体制についてプレゼンをしていただく。その後開発者同士で議論を交わし終了 or 飲み会となるようです。

この交流会の目的は、自分たちの足りないものを知ることだと言う事です。やはり技術的に先を行く会社さんに訪問した時などは、体制の違いに悔しい思いをする事もあるようで、そういう時は「悔しいなぁ、自分達に足りないものがわかったし、帰ったら勉強せなアカンな」となって帰社ということもあるようです。

でも、交流会の中で悔しい思いをしつつも、他社さんには無い自分たちの強みに気づく事もあり、そういうものは逆に「俺達でも通用する。勝負できる!」と自信となって帰って来ることもあるようです。

あと渡辺さんが言われていたのですが、会社間の交流会を始めてから、想定していなかった効果があったようで、交流会の休憩中などに「他社さんあんなことやってるわ、コレはこうやったら取り入れれるし、帰ったら実装してみよか。」など、開発者のモチベーションが上がる事が多々あるようで、最近は一番の目的になっているとのことでした。

あと、どれくらいのペースでやってるのかを聞いた所、去年1年間で16回位やっているようで、1ヶ月に一回以上は行うペースを保ちたいとも言われていました。

これは本当に羨ましい体制です。GDCCEDECなどで各社の開発情報が公開される事はありますが、お互いの開発体制を腹を割って話して議論出来る事って少ないですからね。こんな活動してたら、嫌でも鍛えられますね…。

あと、以前にウチにも来た事があるようでしたが、残念ながら当時は違うチームだったので来たことも知らなかったです…。是非参加したかった…。

単独会社説明会

毎年福岡・大阪・東京で行われている、サイバーさんの会社説明会です。

以下のサイトから、会社説明会のレジュメが確認できますが、学生に向けた内容ですが、自分が見ても聞きたい内容があったりします。

■説明会プログラム

2. プロが見る応募作品と人物像
 実際の合格作品等をお見せしながら、サイバーコネクトツーが求める人物像・スキル
について具体的に説明します。 ゲーム会社に受かるコツを伝授します!

1)プログラマー
2)アーティスト
3)ゲームデザイナー

「サイバーコネクトツー単独会社説明会2010 IN 東京」開催のお知らせ!!(2010.9.11)

終了した会社説明会は参加者のアンケートとともにブログでまとめられています

自分もブログを定期購読しているので「毎回、会社説明会のレポートを上げてるのは凄いですね。」という話をさせてもらったところ「だって、やりっ放しで、フィードバックしないってのは、参加者にも失礼でしょ。」との事で、ごもっともです…。でもこれが出来てる会社は、ほとんどないので、素晴らしい事だと思います。

制作したゲームを盛り上げる試み

アクセル3 ナルティメットトーナメント

自分たちが手がけたゲームでトーナメントを開き、その模様を動画配信しています。

この動画を見た時はかなり衝撃的でした。自分たちも会社で作ったゲームでトーナメント開いたりする事ああったりするんですが「この模様をUstで配信したらおもろいよなぁ」的な事はアイデアがでても、「まぁ無理やろな」と議論になる前に、やめることが多く。しっかり形にしたのはすごいなと思います。

あとは、テロップとか編集とかキッチリしていて、映像としてのクオリティもなかなかのものです。

自分は開発者なので、このチームの開発楽しそうやなぁ、羨ましいぃ。とか思うんですが、実際のユーザーさんからの反応とかどうなんでしょうね?またお会いする機会があれば聞いてみたいところです。

CC2東京(追記)

はてブで、noitseuqさんから指摘があって思い出しました。前回の東京スタジオの項目から抜けていた項目を追記します。

チャレンジャー

東京スタジオの求人が公開された時に、ゲーム・CG業界関係者界隈で話題になった、東京スタジオ独自の募集形態です。

求められる資質

・情熱を持ってゲーム制作に取り組む事ができる
・迅速に判断を下し、素早く行動する事ができる 
・問題を分析し、クリエイティブに解決する事ができる
・集団で制作を行う事の利点を理解し、周囲と協力し助け合いながら仕事に取り組むことができる
・貪欲な知識欲と飽くなき探求心を持ち、広い視野で物事を見ることができる。
必要なスキル

・他のプログラマー職のカテゴライズに当てはまる技量は現時点では持っていないが、
 いずれサイバーコネクトツープログラマーとしてかけがえのない存在になる覚悟を持っている。

交流会で東京スタジオの話になった時に、チャレンジャーのお話を聞かせていただきました。「究極、ゲーム制作はやる気が一番大事で、それを持ってたら技術なんか後からでも教える事ができる。覚悟完了できてるものは、入社当初周りの人間に技術が負けていても、将来的には確実に逆転する。そのリスクはうちで取ります。」という事です。

今までのサイバーさんの考え方にもあるように、この職種の募集はサイバーさんの考え方を極限まで突き詰めた募集形態だと言えます。ただ、この枠で採用されるには、かなり強力なゲームへの情熱が必要との事でした。

今後この枠で採用されたメンバーとは、是非お話してみたいものです。


ちなみに裏話として聞いたのは、この職種、東京スタジオのマネージャの渡辺さんが提案したもので、松山さんに提案書を見せに行ったところ、サラッとみて「OK!」と承認となったようです。ただ、その態度に不信感(?)を持った渡辺さんは、

渡辺「社長、チャレンジャーの項目、見てもらえましたか?」
松山「見たよ、見た見た」
渡辺「本当ですか?ココは東京スタジオで一番力を入れたい所なんです。ちゃんと読んでください!」
松山「だから見たって(怒)」

というようなやりとりがあったようです。実は先日の交流会でも「実際はあんまり読んでなかったんじゃないですか?」「見たよ。チャレンジャーの項目を見た瞬間、俺は良いと思ったんや!」と、上記のやりとりが再度繰り広げられていましたが、とっても羨ましい関係だなと思って見てました。

ブログで展開されるやりとりも、あながち嘘じゃないような気がします…。

GFF(GAME FACTORY'S FRIENDSHIP)と、福岡ゲーム産業振興機構

実は、このエントリーを書くまでは、GFFと福岡ゲーム産業振興機構は一緒のものだと思っていました(汗) 交流会でも意味を混同して使っていたようです…。すいません。

ざっくり書くと、GFFは福岡のゲーム関連会社が加盟している集まりで、福岡ゲーム産業振興機構は、GFF・九州大学・福岡市が協力して作り上げた産学官の連携事業のようです。

福岡ゲーム産業振興機構とは?
http://www.fukuoka-game.com/about.html

インターンシップ (http://www.fukuoka-game.com/internship_08.html)

GFFで行っているインターンシップの制度です。

他の企業さんでもインターンシップをやっているところはありますが、現状はそんなにうまく活用されていない制度ではないでしょうか?GFFでのインターンシップの結果は、ブログでレポートされており、この活動で学んだ結果が報告されています。(サイバーさんと、エレメンツhttp://www.elements-soft.jp/ さんが公開しているようです。)

GFF Podcasting (http://gff.jp/gffcast/blog/cat5/)

GFFに参加している開発会社の方々がゲスト出演して、自分の関わったゲームの事や開発体制の事、またGFFのイベントの内容を音声配信しています。

サイバーさんの他にも、福岡のゲーム開発関連会社さんのお話を聞くことが出来ます。

CEDECGDC報告会 (http://www.cc2.co.jp/blog/?p=2079)

CEDECGDC後に行われる、GFF主催のセミナーの報告会です。

ブログでも詳細にレポートされていますが、前半・後半にわかれた内容、両方共が面白いです。

報告会の前半は、GDCに参加してきたCC2スタッフによるレポート発表。
そして後半は・・・。
プランナー、グラフィックデザイナー、プログラマーのグループに分かれて、
それぞれの場所でラウンドテーブル(互いに情報や意見を交換し合う)が行われました。

交流会で言われていたこととしては、後半に行われるラウンドテーブルが熱く、GFFのメンバーに加え、学生なども参加するようです。

GDCCEDECといえば最先端の技術を発表する場なので、その話をしてもついてこれないメンバーもいるようですが、それでも大事なことだし、将来に必要な技術もあるのでそのまま続けてしまうようです。特に学生などは、今まで開発の経験もないので全くわからない事もあるようですが、プロの空気感を伝えたいので毎回参加してもらっているようです。

次回は、自腹を切ってでもこっそり忍び込みたい…。

まとめ

サイバーさんの体制を見てきましたが、ここから浮かび上がってくるのは、サイバーさんの独自の体制の中心にあるのは「ゲームを面白くするにはどうすればよいか?」という確固たる信念に基づいた行動なのだと思います。

社内の人員の数、福岡という立地、他社との違いなど、現在の状態を分析した上で、この手持ちの札で、どのようにして面白いゲームを作るのか?効率良く開発するにはどうするのか?を考えた結果が、サイバーさんの独自の体制につながっているように思います。

なので「他社さんがやっていたので、うちも取り入れるぞ!」ではなく「自分達にあった体制はなにか?」「それでゲームが面白くなるのか?」と考えられて作られているのではないかと言う事が話の端々から感じられました。例えば、トライファクターの次の体制も、カバル式をそのまま採用せず、カバル式からヒントを得て自社にあった体制を議論し、将来的に出来上がったものをみれば「カバル式・改」ではなく、「サイバー流の〇〇体制」になるのだと思います。

そう、サイバーさんの凄いところは一つ一つの体制ではなく、それを考える”文化”、自分たちに最適なモノを考えていく土壌なのではないでしょうか。それを周りのみんなが理解して挑戦する姿勢が凄いので、それが世に出たときに独自の体制に見えるのだと思います。

交流会の途中で松山さんか言っていた言葉を思い出しました。

「見送り三振はアカンけど、空振り三振は許される。」

交流会でお話した松山さん・渡辺さん・下田さんの発言からは、この気持ちが熱いほどに感じられました。

最後に

交流会を開いてもらい、たくさん聞かせていただき勉強になりましたが、自分は聞くばかりで全然情報が提供できませんでした。それが心残りです…。また機会があれば、こちらからも情報が提供できるように頑張ってみます。

サイバーコネクトツーの皆様、ありがとうございました。感謝しております。

Aqu























一方その頃、桜島の地下にあるサイバーコネクト基地では...


サイバーコネクトスリー 「サイバーコネクトツーの秘密が暴露されたようだな…」
サイバーコネクトフォー 「ククク…奴の体制は、我々が100年前に考え出したもの」
サイバーコネクトファイブ「体制の秘密を話してしまうなど、一族の面汚しよ…」

サイバーコネクトフォーエバー総統
 「今こそ一族の大秘法”オクタファクター構造”を発動するときぞ、ガハハハハ!」









というような事があってもいいほど、たくさんの情報をいただけたと思います。
本当にありがとうございます!