CEDEC 2010「torne(トルネ)のUIでこだわった19のポイント」
CEDEC2010、3日間参加してきました。
かなりたくさんセッションを受講したので可能な限りレポートしようと思います。ただ、すでにニュースサイトではたくさんアップされているようなので、かぶらないように最初はtorneのやつから書こうと思います。
概要
コンセプト:Torneと家電の違い
Torneは開発当時、BD/DVDに焼けない、CS/BS/短波が映らない、録画モードが標準しかない、撮った映像を編集出来ないなど欠点があった。
→そこでTorneでしか体験出来ない、スペックに頼らないモノづくりの追求
家電製品 | torne(トルネ) | |
---|---|---|
コンセプト | 機能ベース(Function Oriented) | ソリューションベース(Solution Oriented) |
機能 | あらゆるニーズに答えるため多機能 | 簡便化 |
差別化 | 機能重視(〇〇エンジン搭載など) | ソフトウェア |
総じて | No.1商品を目指す | Only Oneを目指す |
Torneを生み出せたのは?
UIに注力
圧倒的な快適操作に、ゲームのノウハウが脈々と受け継がれている。
- マニュアル不要の分かりやすさ
- ゲームの場合、マニュアル読んでからゲームをプレイする人があまりいない
- 操作はやりながら覚えていく
- 気持ち良い応答
- ユーザーのやりたい事を、少ないステップで実現してやる
- 効果的な演出
- グラフィカル・アニメーション・サウンドを効果的に使用する
→操作することが楽しくなってくる!
TorneのUIでこだわった、19のポイント
マニュアル不要の分かりやすさを実現するためのポイント
1、ボタンの意味付けを統一
- ○は「決定」、☓は「キャンセル」
- 画面が変わっても意味を変えない
3、メニューやボタンの説明を、画面の中に必ず入れる
- 画面最下部に、ボタンを押したときの説明を表示
4、またその説明を動的に変化させる
- 画面下部にヘルプラインを設け、合わせているカーソルの機能を表示させる
5、方向に対しての意味付けを行う
- 左右の意味付け
- 1つ1つの機能は、左から始まって、右のどん突きで完了
- プログレスバー・シーンサーチなども、左から右
- 上下の意味付け
- メニューやリストは上下に並べる
- 設定パネルも、上下のみで項目選択
6、途中で迷子にならないようにする
- 階層が深い場合でも、☓ボタンの連打でメインメニューに戻る
- 失敗しても大丈夫だという安心感を与える
7、表示メッセージに配慮する
- 専門用語は極力避ける
- メッセージの改行位置を調整する
- 視点が動かなくて済むようにダイアログを小さめに、内容も簡潔に
- 読みやすいようにフォントを使い分ける(基本は2つ、デザイン的にいくつか)
8、できるだけ中央に表示する
- トップメニューなどは、選択している項目の名称が中央に来る
- ヘルプラインやチャンネル切り替え時の番組表示も中央に寄せる
9、必要な情報は際立たせ、不要な情報は隠す
- 選択されているものに対して、必要な情報のみを表示する
- 番組情報を選択したときに、後ろの背景をぼかす
- 必要の無い選択肢は隠すなどなど
10、いつでも操作を受け付ける
- 先行入力の受け付け、操作のブロッキングをしない
- 画面の切り替え時などでも、操作を受け付ける
11、直前の状態を覚える
- 画面を切り替える前の状態を覚えておき、戻った時にカーソルを合わせる
- 自分のたどった軌跡を、戻っていける
12、最もよく使う機能を優先する
- 番組リストで、現在放送中の番組で、○ボタンを押すと「再生」が始まる。
- まだ放送されていない将来の番組で、○ボタンを押すと「録画」が始まる。
- 状況に応じて機能を変える。
- ゲームだと、宝箱の前だと「開ける」、人だと「話す」といったあたりまえの操作
13、キーリピートの調整
- 一定時間、同じ方向への入力でキーリピートが入り高速化
- 番組表では上下にスクロールする際、2段階でキーリピートが入る
- メニューの各所でキーリピートを調節する事で、ストレスを減らす
14、公演時間の都合で割愛
15、リビングに合うデザイン
- 白基調で明るく清潔な印象
- テレビをインテリアとして扱う
16、長時間つけっぱなしでも馴染むような
- 長時間使っていると、BGMが切り替わる
- サムネイルが飛び交うメニューなどなど
17、常に動かす
- 止まってしまうと、死んだUIになってしまう
- フリーズした様に見えるので避ける
18、SEによるフィードバック
- ほとんどの行動にSEを付ける
- スピード感を感じる音を設定(XMBのような、小気味よい雰囲気でデモされました)
19、待つ時間のストレスの軽減
- 地デジの読み込みは必然的に、2,3秒かかってしまう
- クロスフェードや、拡大縮小を利用して、待ち時間を感じさせない
- 途中でアニメーションや、繋ぎの絵を入れる
- ゲームでいうローディング中の処理の応用
実装された時に、ゲームと同様のチェック
上記の様なコンセプトはあるが、実際に触った時の感触は分からない。そこで...
- クラッシュアンドビルド
- 良さそうなアイデアは、まず実装し試してみる
- チューニングチーム
- ゲームと同じレベルまで、操作感をチューニング
- QA
- ゲームのQA部隊に依頼
技術面から見たtorne、構成するモジュール
torneのシステムは2つのモジュールで構成されている
- アプリケーションモジュール
- 通常のゲームと同じ仕組みで動いている
- 番組録画・テレビの視聴などを操作するアプリケーション
- 録画モジュール
- 他のゲームと並列で動作するもの
- こっそり動作させる
- ゲームの負荷に影響しないようなモジュール
- 他のゲームと並列で動作するもの
技術面から見たtorne、高速な番組表の実装
TVの番組表は"文字数"が多く描画負荷が高い。
ただ、1080pでスイスイ動くというのは死守したかった。
そこで考えた二つの手法、
番組単位でレンダリング | 文字単位でのレンダリング | |
---|---|---|
利点 | 文字の位置計算が少なくて済む | 文字種が少ないため、テクスチャサイズを小さく出来る |
欠点 | 番組1つづつがテクスチャになるため、VRAMを圧迫 | 文字の位置計算の量が膨大 |
→数えてみると全番組で1000文字くらいしか使用していなかったため、1枚のテクスチャに収まることがわかった。
テクスチャのサイズ
- 4096 x 4096 pixel、一文字 64 x 64 pixel、DXT1、MIPMAPあり
まとめ:今後の展開
家電との差別化・UIの操作性の向上という目標がある程度形になり、これから面白い事に挑戦できる土壌が出来た。
今後の予定としては、トルミル機能を膨らませてエンターティンメント方向に強化。今以上に触って楽しいレコーダーに進化させたい。
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