CEDEC 2010「Q-Games流アジャイル開発手法:PixelJunk での実践例を紹介」

今回はQ-Gamesさんアジャイル開発手法のセッションまとめます。

このセッションでは、Q-Gamesさんが開発手法としてアジャイルを取り入れた経緯と、取り入れた後の問題点を紹介しており、その変遷での試行錯誤の内容に共感出来るところが多かったです。う〜ん、うちもあるなぁと…。

ではレポートです。

概要

Q-Gamesでのアジャイル開発手法をPixelJunk 最新作を例にして紹介

Q-gamesの会社紹介

関わってきたタイトル
  • Nintendo案件
  • PixelJunkシリーズ
    • Racer
    • Monsters
    • Eden
    • Shooter
  • R&D
人数の比率
  • 社員数:37人
案件 比率
Nintendo 50%
PixelJunk 40%
R&D 10%

Q-gamesの開発スタイル

実際にプレイして判断する
  • 良いところを見つけて残す
  • 悪いところを見つけて除外する・または変更する


 →イテレーションをひたすら繰り返し、ゲームを完成まで持っていくのが、Q-Games流の制作スタイル

問題点
  • 当初の仕様や計画通りには進みにくい?
    • ただし、実際に遊んで感じた結果の方が重要
  • 無駄な実装が多くなる傾向?
    • 面白くなるためには、無駄も必要なプロセス

アジャイル開発の試みと必然性

  • イテレーション
    • 実装物による検証の繰り返し
    • スクラムミーティング(朝礼)
    • これらはアジャイルを知る前から、似たような事をやっていた
  • Q-Gamesは元々、タスク管理にMantisを使っていた
    • Webベースのバグ管理システム
    • スタッフの作業タスク管理に利用


 →元々アジャイルを導入する土壌があった

Mantisの特徴
  • 無料
  • 処理が高速
  • 検索条件が多様(絞り込み)
  • セキュリティが高い
  • ロードマップが定義しやすい
  • タスクの親子関係・関連付けがしやすい
  • ツール自体のカスタマイズがしやすい
    • 社長のディラン自ら、カスタマイズしている
Shooter2以前の課題点
  • マイルストーン式なので、最終チェックまでのスパンが長い
  • タスクの割り振りが外部依存になりがち
    • Q-Gamesではプランナーがほぼ全てのタスク入力を行う
  • タスクが多すぎて、精神的プレッシャーが大きくなった
  • 管理側がスペックの実装漏れに気づきにくい
    • 調子にのって入力していると、管理側が見落とす事があった


 →そこで、Q-Gamesなりにスプリントを導入

スプリント導入意図
  • 2週間分のタスクだけに集中出来るので、タスク過多による精神的プレッシャーが減る
  • 2週間ごとに成果物が出来上がるので、イテレーションが早くなる
    • 開発の軌道修正がしやすい


 →クオリティと、作業効率アップが期待できる

スプリント運用プロセス


  • Mantisのロードマップ機能
    • スプリントごとの進捗を確認するのに便利
  • Mantisのカスタマイズ
    • スプリント用に"予定工数"の項目を追加
Shooter2のスプリントタスク
  • 現在、16スプリント経過したShooter2での3つのフェーズ

スプリント運用で発生した問題点
  • タスクをこなす事に慣れ常態化
  • スプリントの定義を混同
    • 達成すべきタスク = ゲームの目的になってしまった


 →本来は品質的要求仕様(Quality)をスプリントの目的として設定するべき

今後の課題と取り組み


モジュラーディレクションシステムの導入

  • ディレクター・アシスタントディレクターは職種に関係なく選ばれる
    • 担当箇所のクオリティについては、完成までの責任をもつ
    • 他のスタッフからの提案。報告の管理を行う
    • 職種に関係なく選ばれる
      • やはりポイントは人選
スプリントの流れ
  • モジュラーディレクションシステムが有効に周りだした
    • 結果”2週間のスプリント期間は長い”となり、1週間に変更

まとめ

  • Shooter2以前の体制では問題が多かった
    • 最終チェックまでのスパンが長い
    • 見えるタスクが多すぎる
    • タスクを見逃す事も多い
  • 改善案として、スプリントを導入
    • タスクの消化が目的となり、モチベーションが上がらない
  • モジュラーディレクションシステムの導入
    • 任天堂さん案件で成果が出ている


 →まだまだ改善途中、今後も他社との交流の中で、新しい体制を模索していきたい

Q-Gamesさんのレポートは以上です。

次は、セガさんのファンタシースターシリーズでのPERFORCE導入事例を書こうかと思います。あのセッションもタメになりました。