AUJ2011「Transformers Prime」制作事例 レポート

2011/09/16 22:00

  • 書き忘れていた「Asset と Shot」という考えを追記

本日、Autodesk University 2011に参加してきました。
そこでポリゴン・ピクチュアズ(以下、PPI)さんが講演された社内制作環境の考え方が学ぶ所が多かったのでレポートします。

概要

PPI がTransformers Primeを受注し、そのために行った社内制作環境の取り組みを紹介。
特に長期に渡るTVシリーズでは不可欠となる「安定した品質」かつ「大量な物量をこなす」手法をピックアップ

講師

PPI

  • 1983年設立
  • 350名前後 ( 60人強が外国人 )
  • 映画・TVシリーズ・ゲームのティザー映像などを制作している
  • 基本、分業制。
    • 分業制はメリット・デメリットあるが、規模を活かす動きを取りやすい
  • 国際的。日本のみならず、海外からの受注も多い
    • 売り上げは、国内が3割、海外が7割
  • タイ・マレーシア・中国にもAsset制作を依頼している。
    • インドも少し。

Transformers Prime とは


  • インターナショナルな配信を前提とした、大型TVシリーズ
  • フルCG
  • 第一シリーズ 26話 x 22分
  • 制作会社 Husbro Studio
    • Hub チャンネルで放映

チャレンジ

物量
  • 572分 = 9.6時間
  • 最初のエピソード納品まで 7ヶ月
    • 普通は1年 〜 1年半
  • プロジェクト完遂のため、最大150名のスタッフが必要な計算

プロジェクト完遂のための課題

Asset と Shot という考え

Asset
  • シリーズ全体を創り上げるために必要な、基本的な素材
    • Model・Texture・Shader・Rig・Display
Shot
  • エピソードを創り上げるための専用素材
    • Layout・Animation・Effect・Lighting・Composite
    • 使い回しは難しい

リクルート

制作人数最大在籍時 150名のうち、100名を新規採用

新規 100名
既存 50名
150名
海外のスタッフ確保での問題点
  • 震災の影響
    • 震災後1週間で、海外メンバーの2割がいなくなった (地震原発)
  • ビザの影響
    • すごく優秀なスタッフでも、ビザがおりない
    • 最近はビザ取得についてのノウハウが溜まってきた
  • 日本の報酬体系
    • 海外とくらべると、見劣りする部分もある
    • 海外に居る時の報酬のままではなく、日本の報酬体系に合わせられる

外部・内部での膨大なトラフィック

  • 情報共有フローの改善
    • メールによるコミュニケーション
    • Excelによる情報集約からの脱却
グループウェアの導入
  • スケジュール
  • 掲示
  • 社内ニュース
プロジェクトWiki
  • 静的な情報共有の場。既に決まっているものを集約する場所
      • 今までは口伝でやっていた所
  • プロダクションの情報をまとめる。
制作管理データベース
  • 動的な情報の蓄積
    • 制作したAsset / Shotの情報を集約
      • このAssetは誰が作った・何処で使われている
      • このShotで使われているAsset
    • 最初は評判が悪かったが、バージョンアップを繰り返し現在はかなりの信頼を得ている。
    • もうTransformer Primeシリーズでは無くてはならない
タスク受発注チケットシステム : Redmine
  • メールにかわるシステム
    • 情報の見える化・一覧
    • モデル班へのチケットをフォーマット化し、メールベースの手間を削減
    • やり取りのログ化
  • Redmineのカスタムはほとんどしていない
スーパーバイザー・ディレクターによるレビューの高速化
  • 作業の中で"画"を作っている時間は短い
    • 一番時間を取られるのが、チェックでのやり取り。
  • PPIテイクサブミッションツールの開発
    • チェック用のAEで作って、スーパーバイザーにお伺いを立ててチェックしてもらう工程をなくす。
    • 所定のスレッドへジョブをなげ、データベースにその旨を記入。
    • レビュー用に "RV"という再生ツールで行われる

大量生産可能な制作体制

ディレクトリ構造の改革
  • PPI、29年間の中で真剣に考えたことがなかった
    • 150人の人間が、それぞれ好きにディレクトリを作っていてはお話にならない。
  • 大元のフォルダをユーザーで分けるのでは無く「Asset」と「Shot」で分ける
大別層 エピソード・カテゴリ シークエンス ショット 目的別 デパートメント ユーザ アプリケーション プリプロジェクト層

PPI ディレクトリマネージャ
  • 上記、ディレクトリ構造を自動生成するツール
    • GUI上で任意の項目を設定し、ボタン1つで自動生成
ルックデブ (Look Dev) ステージの導入
  • 今まではシェーダを作る人が居なかった
    • ライティングの過程で、シェーダとライティングが調整されていた
    • 結果、ショット毎にシェーダが変わっていた
  • Look Devでのシェーダー管理の一元化
Beauty Pass方式
  • 一発レンダー。
    • マルチパスに分け、コンポジットでの合成をやめる
    • 素材管理の手間と、品質のばらつきを抑える
    • ショット毎のバラつきを無くす
  • 見た目は、Look Devが保証したものがでる
PPI レンダーシーンマネージャの導入
  • 新しいShotシーンを始める時に、モデルを読み込んで、ライトを読み込んで・・・、という手間を省く
    • Mayaシーンのテンプレート化・アラカルト化
    • Mayaライティングシーンセットアップ時間を短縮
コンポジットを After Effects から NUKE へ移行
  • NUKEを使えば素晴らしいクオリティが!ではなく、効率化のため。
  • ノードベースのコンポジット
    • テンプレート化しやすい
    • 一目でわかる
    • テンプレートとギズモ、をスクリプティングでゴニョゴニョしている(書き取れませんでした・・・。)
  • 「他人の作った After Effets シーンを渡されて、パッとみてわかります?」
マットペイントの最大活用
  • 今までの PPI ではあまりなかった。
    • 今回からマットペイントデパートメントを作って、メンバーを集めた。
  • マットペイントに置き換える所
    • 3Dで作っても費用対効果に見合わない遠景
    • 一瞬しか映らないもの
  • 背景制作にかかるコストを削減
SMOKEによる、ポストプロセスの高速化・高度化
  • リテイクを3Dステージに戻さないために導入
    • 3Dのメンバーは次の作業を行っているので、そのまま戻すとボトルネックになる
  • SMOKEをいれて、期待以上の効果が出た
  • 現状はSMOKE使いは一人。それでも回っている。
    • 今後アシスタントを一人増やそうかと検討している。
  • 「お金があるなら入れた方が良い。非常にオススメ!」
ステージの完全分業
  • ステージの完全分業ということで、モデラー・アニメータ・リガーなどをステージ(セクション)で分かれている。
  • その中でも、特に特殊なステージ「Electric Display」「変形」の紹介
Electric Display
  • SF世界・基地に登場するモニターに映る映像を制作するメンバー
    • 現状:3人
変形
  • トランスフォーム(変形)のアイデアを作成する
  • 3日で変形パターンを1つ作成する

課題

  • 円高
    • 受注当初よりドル円レートが14%程度下落している
    • ドルベースでの支払いを交渉して、少しましになっているがそれでも厳しい
  • 人月・工数削減
    • コストの低い、海外に外注
  • 経験値
    • 受注当初よりも、メンバーの作業スピードが上がっている
    • PPIメンバーのモチベーションが高い
      • 上手く導けば円高が進もうと相殺できるのではないかと期待している

所感

業界も会社の文化も違うので、そのまま取り入れて効果が出る部分は少ない。ただ、自社の環境と作るタイトルから導き出した制作環境を作るまでの道のりは学ばないといけない所。早速自プロジェクトでも、再度非効率な点を洗い出し、改善に向けて動いてみる。(会社のレポートみたいな…。)