Fight Night Round 4 と、物理シミュレーション

defarmations
今日のお昼休みに、Game Trailerでムービーを物色していたら「Fight Night Round 4」のDLCのプロモーションビデオが、目に留まりました。

やっぱり、リアルやなぁ〜とか思って観てたんですが、技術的に何をやっているのかが気になってきて調査をしてみた所、アニメーションの制御に、複数のシミュレーションが取り入れられている事が分かってきました。

顔は、ボーンアニメーション + ソフトボディ

このゲームで一番印象に残るのが、顔のダメージ表現です。表情は痛そうにゆがんで、顔の肉が、波打つように変形していくユニークな表現ですが、これを作る為にボーンアニメーションをベースに、ソフトボディが取り入れられているようです。

まずは、ダメージ顔のアニメーションを再生して、スキンの変形を計算し、その形状を基にソフトボディのシミュレーションで、あの独特の肉の揺れを作り出しています。顔の肉は、鼻や額など皮下に骨がある所はほぼ揺れず、ほっぺたや唇など肉がたるむ所は揺れが大きくなるなど、場所によって揺れ方が違うのですが、これを制御するために頂点へのウェイトを行ない、揺れの強弱を指定しているようです。動画を見た感じでは、現実よりちょっと誇張された表現になっており、落とし所が良い感じですね。

また前作「3」では、この顔のダメージ表現をモーションの再生でやっていたようで、毎回結果が同じだったが、今回は毎回結果が違うので、より自然になったとの記述もありました。

筋肉は2つのMuscle System

このタイトルでは、リアルな筋肉のアニメーションを制作するため、Muscle Phisics System(MPS)と、Muscle Flex System(MFS)の2つの筋肉システムが開発されたようです。

MPSは、アニメーションデータを基に、ユーザーからの入力や、ボクサーが外部環境から受ける力、そしてボクサーの疲労を考慮した筋力に応じて、ボーンに動きを与える仕組みです。このシステムを使って、キャラクターに仕込んだボーンを制御し、筋肉の大きな揺れや隆起など、シルエットに影響を与える変形をコントロールしているようです。下記のムービーの、左の大胸筋がボヨンとゆれるのが、それっぽいです。

もう一方の、MFSについては、筋肉の弛緩や、緊張を表現するためのシステムで、簡単に言うと、力を入れて、筋肉繊維がハッキリと見える状態と、力を抜いて筋肉繊維が消える状態を、ノーマルマップのブレンドによって実現しており、MPSでは表現できない、細かい筋肉表現に使われているようです。ノーマルマップのブレンド量については、体の各部の状態によって変化しており、MPSからの情報やを基に決定しているようです。

左が締まっている時(ノーマルマップ最大)で、右が通常状態。

GameTrailerのムービー、41秒目辺りからの選手紹介がわかり易いです。

この辺りの内容は、CGWorld 2009年11月号の記事で書かれていました。

体の衝突などに、物理シミュレーション

選手二人の体がめり込まないように、お互いの体同士にコリジョンを持ち、物理シミュレーションによって、衝突を計算しているようです。これにより、相手のパンチをブロックして、パンチの軌道が変わったり、クリンチの際に体にめり込まないようになっているようです。

この辺りは、以前レポートを書いたUFC2009でもやっているようでしたが、アニメーションを再生した後、お互いの体がめり込まないように、物理シミュレーションによって、骨の位置を上書きしているようです。この辺りのフローについては、PRONEWSにあがっていた、スライドを見ると、良く分かります。

あと、PS3FANにあがっているムービーの30秒目辺りを見るとわかり易いのですが、前作では選手二人の間にある見えない壁により、一定の距離以上近づけなかったものが、今回からは、体と体がぶつかるような自然な押しアタリになっています。パンチなども、ブロックされれば軌道がそれたり、肩から相手にぶつかれば、ぶつかった相手は力がかかった所から、後ろに仰け反る様になっているのがわかります。

このシステムは、ゲームシステムとしては、制御しにくい部分もあるのかな?と感じましたが、見た目の自然さについては格段に向上しているように見えました。その辺りどうなんでしょう。

その他、グローブとか、血とか汗とか

肉体以外でも、グローブがぶつかった時に変形していたり、皺の強弱に変化が付けられているので、体と同じMPSとMFS使ってるのかな?とか、血や汗にもシミュレーションが使われているようでしたが、検索しても具体的な内容が出てこなかったので、調べきれませんでした。

まとめ

映像で見ると色々やっていますが、やはり印象に残るのは、顔のダメージ表現が一番大きい効果を上げているようですね。他の表現に関しては、ぱっと見ているだけでは、あんまり印象には残らないなぁというのが正直なところです。

ただ、Fight Night Round 4に登場するキャラクターって、あんまり不気味の谷現象に陥っていない、数少ないタイトルなんですよね。それの理由が、筋肉の微妙な揺れや、緊張と緩和の制御だったりするのであれば、かなり効果があったという事になります。目では認識出来ていないが、脳みそにリアルな印象を与えているのかも知れません。あくまで憶測ですが…。

Fight Night Round 4購入して、嘗め回すように観察してみようかなぁ。でも、また実績解除に明け暮れそう…。Modern Warfare 2 の二の舞。悩みどころですねぇ…。

参考記事