ブレイブルー CS 「eスポーツイベントを意識した、格闘ゲームのゲームデザイン」

昨日、京都の立命館大学で行われた、eスポーツのイベントに参加してきました。

内容はブレイブルー CONTINUUM SHIFT(以下、ブレイブルーCS)をテーマに、京都のゲームセンターa-choさんが解説・アナウンスを行うゲーム大会と、ブレイブルーCSの開発者によるゲームデザインについての講演でした。特に格闘ゲームの人口拡大についての話と、現在の格闘ゲームの認知を広げようという動きは、なかなか相性が良いんじゃないかな。と気付かされたイベントで、参加して良かったと思います。

概要

日付 2010年6月12日(土)
時間 13:00〜17:30
場所 立命館大学 衣笠キャンパス 充光館301号室
レジュメ 第二部:ブレイブルーCS スペシャルマッチ(一回戦・準決勝)
第二部:ブレイブルーCS「eスポーツイベントを意識した、格闘ゲームゲームデザイン
第三部:ブレイブルーCS スペシャルマッチ(決勝戦・エキシビジョンマッチ)

その中でも、第二部のブレイブルーCS開発者による、ゲームデザインについての講演が面白かったので、そちらの内容をまとめてみました。

第二部:ブレイブルーCS「eスポーツイベントを意識した、格闘ゲームゲームデザイン

講師

eスポーツとは?(配布されたフライヤーから抜粋)

  • eスポーツとはElectronic Sportsの略語で、競技性の高いTV・PCゲームを使ったエンターティメントの総称
    • アメリカ・ヨーロッパだけではなく、韓国・中国で盛んにeスポーツイベントが行われている
    • IntelDELLなどの企業がスポンサーとなって、総額賞金8000万円の「Intel Extreme Masters」のような大きな大会も開催されている
    • 実際、プロプレイヤーとして年収一億円のプレイヤーもいる
  • スウェーデン・韓国・中国にはプロリーグが存在する
  • 日本はゲーム大国といわれながら"eスポーツ後進国"と言われている
    • 日本でのeスポーツ普及に向けて、2007年に「日本eスポーツ協会設立準備委員会(JASPA)」
    • 2009年に「日本eスポーツ学会(JESS)」の設立など、国内でも動きが始まっている
  • 2009年6月、早稲田大学が国内初となる大学生による大会、早稲田eスポーツ選手権を開催
  • 同年、立命館大学も西日本初となる、eスポーツイベントを開催
    • 今回のイベントは第二回となっている

講演内容

ブレイブルー CSを作るときに意識したこと
  • 前作のユーザーも大事だが、新規のプレイヤーの増加を意識して作っっている
    • ビギナーモードの搭載
最近の格闘ゲームは先鋭化されて来ている
  • 格闘ゲームはギャラリー受けする反面、自分がプレイするというモチベーションが湧きにくくなってきている。
    • 見る専(ギャラリーオンリーのユーザー)の増加
    • どうしても、プレイしてもらう事のできるような取っ掛かりを作りたかった
  • ギルティギアは、上手い人のプレイを見ていると面白いが、実際対戦すると太刀打ちできない
    • 見ていて楽しいのはもちろん重要だが、敷居が高くなってしまう事に不安もあった
ギルティギアゲームデザインから大きく変わった事
  • 液晶モニタ採用による、ラグ・遅延との戦い
    • ブラウン管時代から流行っているジャンルなので、やり込むと1フレームの遅延が気になってくる
      • FPSなどはオンラインが中心となって流行したので、その辺りを考慮したゲームデザインになっている
  • ブレイブルーは先行入力を簡単作ったシステム
    • 硬直中にボタンを入力していれば、入力を受け付けてくれる
      • ラグを意識した作り
    • 目押しコンボなどはラグのある環境では難しい
家庭用で入ったシステム
  • チャレンジモード
    • 段階を踏んで、コンボを練習するモードとして設定
      • 最初はヌルく、最後はマゾく
    • ゲーム内で、コンボのリプレイ(解答)が確認できるモードの実装
      • 「技の羅列を見ていてもわからん」といった事を、実際のコンボを見て「なるほど」と納得してもらう
  • チュートリアルモード
    • レイチェルによる、手取り足取り操作を教えてくれるモード
      • 歩きなさい。しゃがみなさい。相手の攻撃をガードしなさい。など格闘ゲームの基本操作から学べる
    • 初心者を救済できるようなシステムとして搭載
      • Aボタンを押したら攻撃が出るよ。
      • ガードってどうするの?
      • 下段って何?
      • 中段って何?に答える
    • 格闘ゲーム初心者・やったことがない人の気持ちになった
      • 自分も昔は、ガードの仕方もわからなかった…。
    • 格闘ゲームユーザーからしたら「常識やん!」って事を噛み砕く
      • 最初から、対戦をして、負けると萎えちゃうので、一から格闘ゲームの"いろは"を教える
    • これから格闘ゲームをやろうという人の間口になれば良いと思う。
格闘ゲーム人口が少なくなってきている
  • 格闘ゲームをただ単に発売するだけでは流行らない
    • どうすればゲームセンターに戻ってきてくれるのかを考えた
  • 格闘ゲームは敷居の高いものではなく、楽しいものだという事を伝えたかった
  • まずは、注目されるモノにしようと考えた
    • 声優目当てでも良いが、ブレイブルーに注目を持ってもらいたい
    • ストーリーモードを作り、キャラクターを立てる
  • そこで引っかかったユーザーにまず動かしてもらおう、でもなんだかわからん???という、状態を無くしたかった。
    • 格闘ゲームとはなんぞや?というものを説明したかった
      • とはいえ、専門用語が多い
      • それを救済するシステムとして、チュートリアルとチャレンジモード
既存の格闘ゲームユーザーを、ブレイブルーに引き込む要素はあったか?
  • 上記の要素以外でいうと、多彩なユーザースキルに応じたキャラクターを用意した
    • ハザマ
      • 見た目が新しいが、作りはガチガチの格闘ゲームユーザ向け
      • 鎖を使った移動は、すぐには使いこなせるようには思えない
      • ただ現在はキャラ使用率10%超と人気がある
    • ツバキ:初心者向けとして作った
      • ツバキはツバキで、ころもこん?の研究が進んでいる
      • ↓↓B(ガード不能)が使い易い
      • 相手の起き上がりに重ねると、それなりに戦える
      • ただ、次への課題はある
F1乗りばっかり集まって車を作ると、結局F1を作っちゃう
  • 自分達は、みんなが乗れるスポーツカーを作りたい
    • 先鋭化すると、誰も乗れないものが出来上がる
  • ギルティギアは、フォースロマンキャンセルが出来ないと話にならない
    • でも、あのゲームの最大の面白さは、間違いなくフォースロマンキャンセル
      • それが敷居の高さにつながり、ユーザー数が減っていった
  • それが嫌で今回は調整したつもり
  • 格闘ツールとして突き詰めて行き過ぎるとマズイ
    • 将棋やチェスなど、力量が互角に近い状況にならないと、始まらない状況にするとマズイ
    • 将棋・チェスは、歴史と遊ぶ人工の数が多いので成り立っているが、格闘ゲームはそういう状況ではない

eスポーツとしての発展を考えたゲームデザイン

ブレイブルーCSの醍醐味
  • オンラインの環境は、胸を張ってよく出来ていると言える
    • この環境を利用して対戦の面白さを感じて欲しい
スポーツとして発展させるには、スター選手がいないとしんどいかもと考えている
  • 野球でも、サッカーでもそう
    • ルールを知らなくても、選手の活躍を見ているだけで、楽しめる環境が必要ではないか
  • スト4の梅原くんはプロになった
    • そういう選手が出てくると広がると思う
一番の理想は闘劇などのイベントを全国ネットTVで中継する
  • TVで試合を観て、そこで活躍している選手に憧れを持ってもらえる
    • あの舞台に上がりたいと思ってくれる環境づくりを考えていきたい
とにかく人口を増やさないといけない
  • どんなに上手い人間がいても、それが2人しかいない。だと話しにならない
  • 上手・下手は、ひとまず置いておいて、それが千人いるのか?一万人いるのか?その方が重要
    • 今はやっとそこを改善するべく歩みだした段階
    • まだ初期の初期

質疑応答

講演の最後に、参加者のみなさんから質疑応答の時間が設けられました

Q : ビギナモードで気になった事
  • "ビギナーモード"とつくと初心者がやりたがらないことが多い
  • だいたい、初心者は普通のモードをやって、玉砕することが多いがそれをどう思うか
A : おっしゃられる通り。社内でももめた
  • オートマチックモードでもいいんじゃないかと、思っていた事もあった
    • 自動車でいうと、オートマから、ミッションにレベルアップしていく様な感じ
  • 正直、いろいろ検討した。
    • アーケードで出した時は、アーケードの都合上こういう形になった
  • ただ、載せないより載せる方が良いという決断
    • よりより形を模索中。最初の一歩になればよいかと思っている。
Q:新しい客層を求めるという点では、アーケードと家庭用で求める客層は違うのか?
A:昔は違ったと思う。でも今はそんなこと言っている場合ではない
  • 今は分けて考える余裕がなくなっている。興味を持った人に一人でも、二人でも間口に入ってもらいたい。
Q:使っていて楽しいキャラ
A:基本全員好き、強いて挙げるなら
  • Pachi 氏
    • 最近好んで使うのは、ハザマ・ラムダ
  • モリ 氏
    • 好き:白面
    • 使っていて楽しい:ラムダ
    • 対戦していて楽しいのは:ジン
Q:アークシステムワークス以外で、好きな格闘ゲームは?
A:色々あそんでいるが、強いて挙げるなら
Q,家庭用のオンラインが流行ると、ゲーセンにこないのではないかという心配がある
A:それはそのとおり。
  • ただ、まずは人口を増やさないといけないので、家庭用で対戦の面白さを知ってほしいという狙いはある
  • アーケードは、アーケードでしか味わえないライブ感がある
    • それはそれで強力な強み
    • 格闘ゲームユーザーなら、両方味わって欲しい

以上。