アンチャーテッド2 メイキング:Naughty Dogの哲学


ゲーム内で直したいところがあれば
許可なんか取らず
直して最高にしてしまえ

Naughty Dog のゲームデザイナー採用基準の記事のコメント欄で情報をいただいた、アンチャーテッド2に収録されているメイキング映像が、ニコニコ動画にアップされていました。

そのメイキングの中で出てきたのが、上の言葉です。

いやぁ、面白かった。最近見たメイキングの中では、最高なんじゃないでしょうか。計8本のムービーがありますが、全て名言満載で、観ていて飽きなかったです。本当に全てがゲーム制作に役立つんじゃないかな…。かなりビッグマウスなものもあると思いますが、それでも、これだけ自信を持って発言できる開発者はカッコいい!と思います。

以下、気にいった発言をまとめてみました。
ほぼ字幕を抜き出したままにしているので、読んだだけでは意味が通じにくい文章もありますが、そのあたりはムービーをご覧になって補完していただければと思います。

1,ストーリーとアート

人間の本当の性質は
プレッシャーをかけられているときの選択肢にあると思います
ネイトではその部分を表現しています
何かがあって、彼が追い込まれると初めて彼のスキルや頭の良さが出てヒーローになります
緊急事態では人の本当の性格が出ます

2,技術とゲームプレイ

今作では一作目で使った独自の物理エンジンの代わりに
Havokの物理エンジンを使いました
前回できなかった事が、たくさん実現できました

天井からぶら下がっている照明が
周りで起きているアクションに合わせて動いたり
ゲーム中に破壊できる隠れ場所があります
3Dソフトの中で前もって作る物理と
リアルタイムのゲーム内の爆発や銃撃に反応している物との境界線を
ぼかしたかったんです

もっとたくさんの爆発
もっとハリウッドのアクション大作のような
爆発や崩れるビルを詰め込んでます
ユーザー体験を最大限にしてあげたいんです
12〜15時間をかけてゲームを遊んでくれるなら
1分毎に予想外の何かを提供したいんです

3,カットシーンを作るまで

同じ役者さん達に
音声とモーション両方演じてもらう利点は
役者さんの間に生まれるユニークなエネルギーです

個別でサウンドブースで
演技をしていると出てこないものです

ある程度のアドリブの余地を与えています
脚本はありますが、絶対ではありません
現場でもっと面白いアイデアが出てきたり、
役者さんから面白いアドリブをした場合使うようにしてます

前もって個別で収録してた場合
こういった偶然は絶対に生まれません

モーションキャプチャー中に 同時に声も収録しているのは
役者が最も感情移入しているからです
ベストな演技をしている瞬間なのです
アフレコをするよりずっと気持ちがいんです

4,オンライン技術

オンラインを始めた時は
プレイヤーにとってシングルプレイと同じぐらい
わかりやすくしたかったです
STARTボタンを押したらゲームが開始する

シネマモードを作れたのも
簡単にHDDへシネマファイルを保存できるからです

そしてクラウド技術を使っています
シネマのファイルをクラウドに保存する事ができます
友人と共有したい時には
友人が簡単にクラウドから拾って
自分達のHDDへダウンロードできます

5,セル・プロセッサを理解するまで

アンチャーテッドではアニメーションブレンディング
を技術の中心的な機能にしています
キャラクターの動きを作る基本的な部分です
高い質のアニメーションを作るためのユニークな方法です

ひとつのキャラクターに一度に
2つから20も30ものアニメーションをかけることができます
手や顔 肩 背中と足を動かすことができ
アニメーターにプレイヤーが思いつく全ての行動を作らせるのでは無く

我々がアニメーションを混ぜ合わせ重ねることによって
プレイヤーの自由がアニメーターの腕に制限されないんです

SPUに機能を追加しカメラやモーションのブラーを
全部SPUで効率良く
前作よりも高い質で行うようにしました

ブルームとダウンサンプリング等 焦点のぼかしを含む機能を追加しました

6,ノーティドッグ

ノーティドッグゲームデザインやるのはいいよ
毎日が楽しい。
プレイヤーを知れ。自分を知れ。

ステージがかっこ悪かったら約束できるよ
皆が寄ってきて
「コレを最高にするアイディアはあるの?」と聞いてくる

個別のオフィスに居るより、
ここにいる方が相手が今何をやっているのか
どういう仕事をしているのかが、わかります。

ここで働く魅力の一つが、コラボレーションする環境
仕事では誰もが、いつでも意見を述べていい

特別な会社です。
ほとんど全員が、ゲームデザイナーである。
ここに居る全員がゲームデザイナーです。
社員全員がゲームへのインプットするように進められます

この会社では、自分が何をしているのか分からない人は一人も居ません

(ゲームデザイナーの発言)
プログラマーはデザイナーでもあるので、我々からの指示は必要としてません
本当に凄いと同時に
僕らの存在意義が問われます。

アーティストとプログラマによって経営されているので、
やっている事に対して情熱があります
官僚もいません

会議もしません
何か欲しい時はデザイナーを捕まえて、
「今コレをやっているんだけどどう?」と相談するだけ

7,ノーティドッグの哲学

マネージメント嫌い 会議も嫌い
長いメールも嫌です

ゲーム内で直したいところがあれば
許可なんか取らず
直して最高にしてしまえ

秘訣は?
どういう会社なの?と

気障かもしれないんですが
本当に社員は制限します

厳しい採用条件があります
各分野のテストがあります
難しい面談のプロセスもあります

入ってくる人たちの仕事のスタイルが
われわれのスタイルと合っているかどうか

つまり全員が自発的で積極的である事です
いわゆる管理はありません

採用したい人たちは
クリエイティビティと才能で選んでます
皆がお互いとコラボレーションするようにしたいんです
その時に「魔法」が生まれるので

例えば
プログラマとアニメーターが一緒に
モデラーとテキスチャ・アーティストが一緒に
隣同士に座って日常的に会話しています

官僚主義 上下関係 そういったのは僕たちらしくないです

素晴らしいチームがいるので
凄い仕事をしてくれると
信頼できる人たちがいるので
ほとんど指示をしなくても安心です
そういった人たちにノーティドッグへ来てもらいたいです

以前、取り上げた記事で、採用基準がとてつもなく高い理由はこういう事だったんですね。こんな環境で働ける人間は、ゲームに対する幅広い知識と技術力。それにゲームをもっと面白くしたいという情熱も求められる。そういう人たちを厳選して集めているのが、Naughty Dogという会社みたいです。

壮絶な環境ですが、そこからアンチャーテッド2が生まれた事はとても興味深い事だと思います。海外の他の会社もこんな感じなのでしょうか。ふつふつと興味が沸いてきました!