GDC2010報告会「ビジュアルアート系セッションから〜技術より手法〜」
前回のレポートから日にちが空いたので、新鮮さが失われつつありますが、GDC報告会のレポートを書こうと思います。
というのも、先週抜いた親知らずの跡がずっと痛くて、家帰ってからは毎日寝込んでました。うぅぅ…。まぁそれはともかく、今回はGDC報告会のアーティストパートの報告をまとめました。
ビジュアルアート系セッションから〜技術より手法〜
はじめに
この報告は、セガの岩出敬さんと、スクウェアエニックスの田中雄介さん2名による、GDC2010で参加したビジュアルアート(以下VA)系セッションの、総括を報告されたものです。
ここでは一つのセッション内容を掘り下げるのではなく、お二人がGDCで受けたVA系のセッションからうけた印象や業界のトレンドを総括的にまとめられており、各ニュースサイトに載っている記事では味わえない、アーティスト視点からのより実践的な内容を報告されています。
アジェンダ
- 今回受講したセッション
- GDC2010全体の雰囲気・トレンド
- セッションを例に挙げて解説
- まとめ
GDC2010全体の雰囲気・トレンド
- 結論からいうと”革新的な技術の発表は少なかった”
- 技術を発表するのではなく、手法(創意工夫)の発表が多くなっていた
- 魅せるための手法 (ゲーム的な演出手法)
- 効率化のための手法
→すでに、ノーマルマップがどう、シェーダーがどうとかいう話はなく、それらを効率的に、凄いものに魅せる手法の話が中心となっていた。
→今世代機の技術は、一段落したイメージ。
1.映画制作のテクニックの導入
Uncharted 2 : Art direction
- チームが目指したのは、どこまでハリウッドに近づけれるのか?
- ゲームも映画も解決法が同じである
- 今までも、ハリウッドの手法を一部使ったゲームはあったが・・・。
- 彼のサイトで、Uncharted 2のコンセプトアートなどを見る事が出来ます。
- 具体的な作業としては
- ColorScriptの制作
- 各場面でのコンセプトアートの制作
- SHAPE LANGUAGE(建築形態言語)
- 映画背景で使用される、建物や構造物への認知科学的なアプローチでの設計
- シャンバラの寺院などは、安定感を表現するために、ピラミッド型の設計
- 不安な印象を与えたいジャングルでは、逆三角形のオブジェクト(墜落した飛行機)を配置し、不安感を与える
→テクノロジーではなく、演出の手法
- 作者: ウィリアムミッチェル,長倉威彦
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 1991/08
- メディア: 単行本
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2.効果的に魅せるためのアイディア
インフェイマスの街生成について(Building an open-world game without hiring an army)
http://www.inside-games.jp/article/2010/03/13/40974.html
- 街を四角形のタイルベースのモノではなく、六角形ベースで作る
- まっすぐ走ればすぐに曲がり角がくるので、絶対に地平線が見えないものになりゲーム向き
- 要所にふさわしい、ランドマーク的なオブジェクトを置けば、リピートの違和感は全く無くなる
3.クオリティを備えるための管理術
アートディレクション・オブ・バットマン(Rebooting a Super Hero Video Game IP)
http://www.inside-games.jp/article/2010/03/16/41038.html
- 元々がアメコミ原作なので、アーティスティックなライティングになっている
- 普通に作ると、写真をみて作るのではないので、ブレる
- メンバーによって、雰囲気や色の方向性がバラついてしまう
- クオリティを揃えるための管理術として、カラースクリプトを徹底的に用意した
- ガイド・リファレンスを使った
4.分業化の定着によるスキルの追求
→海外がずっと先行している作業フロー
- 今までの制作では、一人のメンバーが、絵を描いて、ポリゴン作って、テクスチャ描いてと言う事をしてきたが、日本でも大規模なフィールドを使用したゲーム制作が必要になってきて、上記のフローに移行していたり・移行しつつある。
- まだ日本では分業化によって、ポリゴン作るだけ、テクスチャ描くだけという作業が、モチベーション的にネガティブなイメージがあるが、欧米では悩む所はそういう所ではない。
- レベルデザイナーからくる、ブロックメッシュを背景アーティストがどう料理するか
- 渡されたブロックメッシュ通りに、全てのオブジェクトを配置するだけではクリエイティブではない
- たとえば、レベルデザイン的に”侵入不可”としてブロックメッシュの壁が置かれていた場合でも、そこを山にしたり、廃屋にしたり、断崖絶壁にしたりクリエイティブに出来る要素はいくらでもある
※ここで紹介されていた、画像を見ると、ブロックメッシュからは、想像出来ないぶっ飛んだ発想で、背景が組まれていました。
効率化のための手法
- 効率化のための手法とは?
- 現代機で膨大に増えてきている、アーティストのタスクを効率良くこなすための手法
- アンチャーテッドモーションキャプチャー(以下、MC)収録について
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100313_354581.html
- アンチャーテッドでは、音声データとMOCAP収録を同時に行った
- 音声とMOCAPを一緒に撮影すると、どんなメリットがあるのか?
- フェイシャル作成スタッフが、音声の出荷を待つ必要がない
- だいたい音声データは開発末期に来るので、フェイシャル作業は切羽詰ることが多い
- 体と、音声データのズレが生まれにくいので、後々の修正が少なくて済む
- アフレコする場合でも、アクションと同じ役者であれば、収録されたMOCAPデータとのズレが少ない
- ディレクションが一度で済む
- MC収録でMCのディレクター、音声収録で別のディレクターが入るので、それが一度で済む
- 役者を雇うコスト面にも効果あり
- フェイシャル
- 全キャラ、顔モデルのトポロジーを同じにする
- セットアップの効率化
- クオリティの統一(均一化)
- モーション
- モーションのりターゲット
- DCCツール上でのリターゲット
- 開発ツール
- 開発サポートツール群が潤沢
- 一つ一つは細かいが、痒いところに手が届く
まとめ
昨年末、自分もちょろっと書きましたが、すでに現在のVAのトレンドは、技術から手法へ移行しているというのは、GDCでも感じられたようですね。最近、技術的な部分はどこも同じモノになってきているので、それよりもその技術を使いこなした上で、どう表現するか、そのデータをどれだけ少ない工数で作るかが重要になってきているようです。欧米では映画業界が近いこともあり、その手法を取り入れて凄いビジュアルを創り上げようというのは、想像もしやすいですし、自然の流れのような気がします。
日本でもその技法を取り入れて、将来的にゲームを作っていくのか?それとも日本独自の路線を切り開いていくのか?
個人的には、最近の日本のタイトルは後者の可能性を含んだタイトルがいくつか見受けられるようになってきたので、たぶん独自の路線を模索しているんじゃないかな?と感じています。そのあたりの話は追々できれば良いなぁ〜と思いつつ、今回はここで終わります。